その13 転倒事故と姿勢制御

ダ・ヴィンチのデッサン

イタリア・ルネサンス期を代表する芸術家であり、万能の天才といわれた巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ。

解剖学の研究家でもあった彼は、人の足について、

『足は人間工学上、最大の傑作であり、そしてまた最高の芸術作品である』

と述べています。

大腿骨頸部骨折

ダ・ヴィンチの死後、500年弱。
人の足はその力強さを失いつつあるのかもしれない・・・

総務省統計局の調査による総人口に対する老年人口は、平成12年で17.5%だったのが、平成22年1月1日では22.8%と、3人に1人が高齢者という時代もすぐそこにきている感じです。

『やっぱり、年とって寝たきりにだけはなりたくないですね』

という話をちらほら聞く。

国民生活基礎調査によれば、65歳以上の寝たきり状態のおもな原因は高齢による衰弱を除けば、第1位が脳血管疾患(38%)、第2位は骨折(13%)ということがわかります。この2つをあわせると寝たきり状態の原因の約半分を占めることになります。

寝たきり原因第2位の骨折は、70%が大腿骨頸部骨折で、その原因の95%は転倒によるものといわれいます。

1987年、1992年、1997年に行われた、大腿骨頸部骨折全国頻度調査報告によると、寝たきりの原因となる大腿骨頸部骨折の大半は転倒や転落が原因であり、骨粗鬆症とも関連があることが明らかとなりました。大腿骨頸部骨折新患者数は1987年と1997年を比較して1.7倍も増加していたとのこと。

また別の調査では、骨粗鬆症は女性に多いこともあり、大腿骨頚部骨折の発生率は男性対女性では1:3。なんと、女性が男性の約3倍!!

『転倒による、大腿骨頸部骨折(股関節骨折)で寝たきりになる人(女性)が多い』

というわけです。

前置きが長くなりましたが、今回は【転倒予防と姿勢制御】を考えてみようかと思います。
そもそも動かないとされている【骨盤】をなにかする時代は終わりました。
いまだに、なんでも【骨盤】というのは古い!

骨盤は天空に浮かぶ宮殿。
柱は足です!

骨盤をどうにかしたところで、将来の転倒予防にはならないというわけです。

骨盤矯正をして、美白に精を出す女性の老後は・・・想像つきますね。

☆足裏のスゲー情報収集能力

どうして、バランス(姿勢)が崩れ、転倒してしまうのか?
姿勢はどのように制御されているのか?

足裏に秘密があります。
足裏には姿勢を制御するために必要な情報を収集する【メカノレセプター】と呼ばれる神経器官がたくさん点在しています。特に前足部(親指)・中足骨・踵の体重のかかりやすい部分に集中しています。

【メカノレセプター】
「手足の位置情報・動作速度・圧力などの動きに関する様々な情報を脳に送っている受容器(receiptor・センサー)」

足裏にあるセンサーが刺激され、地面の状態やカラダの傾きなどを感知することで、身体の様々な筋肉に指令が送られ、姿勢を保つ働きが行われます。

メカノレセプターからの情報が少なくなることによって、姿勢制御がうまくできずに転倒の原因になるといわれています。

九州労災病院の整形外科医・井原秀俊先生らは、大学生11名を対象として、足趾・足底訓練を週3回、8週間行った結果、【筋力・筋反応・バランス・下肢制動機能・運動遂行能】が改善したとまとめた。

足趾・足底訓練によりメカノレセプターが賦活され、神経運動器強調を改善するとともに、足底筋群・腓腹筋・ハムストリングスの運動連鎖を誘発し、姿勢制御能が改善され、促進されたためと考察している。

さらに、訓練中止3ヶ月後も大部分が維持されていることがわかった。

☆参考文献
井原秀俊,吉田拓也,高橋清美・他:足趾・足底訓練が筋力・バランス能に及ぼす効果.整形スポーツ会誌,1995,

井原秀俊,三輪 恵,石橋敏郎・他:足趾訓練の持続効果―訓練中止3ヵ月後の検討―.整形外科と災害外科,1997,
足趾・足底訓練といっても、写真のようなカンタンな訓練です。

同じようなテスト(10分間、週3回、8週間)を高齢者に対して行った場合も、ふらつきが大幅に改善したという結果の報告もあります。

☆参考文献
小林隆司,細田昌孝,峯松 亮・他:高齢者の足趾把握訓練. が静的重心動揺に及ぼす影響.日災医会誌,1999,

そこで我らが【足半】の登場です(微笑)

親指をはじめ、その他の指が出ることによって、
中足骨をわらじ部分がサポートし、
端が踵を刺激、
メカノレセプターを集中刺激する構造になっています(微笑)

メカノレセプターが刺激されることで、運動連鎖が起こり、姿勢とバランスが手に入ります。

なんて、すばらしい道具なんでしょう〜
昔の人の知恵に感謝。
☆補足解説

運動連鎖には2つあります。

開放性運動連鎖(open kinetic chain)と閉鎖性運動連鎖(closed kinetic chain)。

カンタンにまとめると、

【足裏が地面に接地した状態で行う運動】=閉鎖性運動連鎖・下肢全体の筋群と3つの関節(足関節・膝関節・股関節)が協調して収縮する有効なトレーニング。

【足裏が地面から浮いた状態で行う運動】=開放性運動連鎖・特定の筋肉の最大筋力を高めるためには有効ですが、共同筋群や股関節・足関節との連動性に乏しい。

一般的なトレーニングは開放性が多いですが・・・
日常の【立つ・座る・歩く・走る・ジャンプ・階段の上り下り】など、ほとんど動きは閉鎖性運動連鎖なのです。

日常生活を楽にしたいと思って、開放性トレーニングで特定の筋肉を鍛えても、実用的ではないということになります。

つまり寝転んだ状態で腹筋運動をしても、姿勢には反映されないというわけです(笑)

開放性運動連鎖(open kinetic chain)

閉鎖性運動連鎖(closed kinetic chain)

☆まとめ

転倒による骨折をして、寝たきりになるのを予防するには・・・

1.足裏にあるメカノレセプターを刺激して、全体のバランス力・筋力アップ

2.骨粗鬆症も原因の一つ。骨を強くするには、カルシウムの吸収率を高め骨の生成を助けるビタミンDが必須。紫外線が皮膚に当たるとビタミンDができる。
高齢者では1日に20〜25μgのビタミンDが必要。
ビキニ姿の成人白人女性が夏に20分間日光浴するだけで、皮膚で約250μgのビタミンDが作られるというデータがあります。

裸足または足半を履いて、15分程度、日光浴をしながら散歩ということになりますね。

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